第52章

九条遥はカスタードまんを手に取り、一口かじった。濃厚なミルクの香りが広がり、甘すぎず、もちもちとした食感が口の中に広がる。

「このカスタードまん、本当においしいね。食べてみる?」

彼女は質問とは無関係な言葉を突然口にした。まるで彼の言葉を聞いていないかのように平静だった。

二ノ宮涼介は眉間にしわを寄せ、瞳の色がさらに深くなった。

「君は自由だ」と彼は繰り返した。

これは彼女がずっと望んでいたことではなかったか?

今、彼は彼女の願い通りに解放してやった。喜ぶべきはずだ。

彼女はまんを飲み込み、喉の渇きを感じて粥を一口飲んでから顔を上げた。「私……よく分からないんだけど、私を憎まな...

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